シューベルト:歌曲集『冬の旅』第24曲「ライアー弾き」~ライアー鳴り止まず

24.ライアー弾き

むこうの村はずれ
ライアー弾きが立ち
かじかんだ指で
懸命に回している 

氷の上に裸足で
ふらふらとよろめき
その小さい皿は
ずっと空のままだ

誰も聞こうとしない
誰も見ようとしない
老いた男の周りで
犬たちが唸る

彼は何が起きようと
一切をなるがままに任せ
回す そのライアーは
決して鳴り止むことがない

不思議な御老人
あなたと行くことになるのだろうか
僕の歌に合わせて
ライアーを回してくださいますか

24. Der Leiermann

Drüben hinterm Dorfe
Steht ein Leiermann,
Und mit starren Fingern
Dreht er, was er kann,

Barfuß auf dem Eise
Wankt er hin und her,
Und sein kleiner Teller
Bleibt ihm immer leer.

Keiner mag ihn hören,
Keiner sieht ihn an,
Und die Hunde knurren
Um den alten Mann,

Und er läßt es gehen
Alles, wie es will,
Dreht, und seine Leier
Steht ihm nimmer still.

Wunderlicher Alter,
Soll ich mit dir gehn ?
Willst zu meinen Liedern
Deine Leier drehn ?



訳詩はとうに完成していたのですが、解説に行き詰まってしまいました。いろいろ考えてはいるのですが、非常に難しく、なかなかまとまりがつかないので、とりあえず訳詩だけを公開することにします。全23篇の苦悩の旅の結末としてこの詩を味わっていただければ幸いです。解説は後日追加します。

なおこちらに24篇を通して読めるPDFファイルを置きました。よろしければご覧下さい。

シューベルト:歌曲集『冬の旅』(詩:ミュラー)全24曲対訳(甲斐貴也)

(甲斐貴也 2008.10.6)

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この記事へのコメント

渡辺美奈子
2008年10月07日 00:20
甲斐さんが『冬の旅』を全訳されたのは9月20日でしたが、改めておめでとうございます。完訳の前に甲斐さんの刺激を受け、私も最後の2行を改訳しました。感謝します。この作品の魅力のひとつは、拙論(2006)でも書きましたが、楽器が鳴りやまぬまま、未解決に終わるところではないでしょうか。ですから、苦労し、悩んだ挙げ句、結果的に解決できぬまま余韻を残して終わった今回の訳詩は、言い換えるならば最も深みのあるものだったと思います。私も、まだこの冬の旅を続けますが、折に触れて、あなたの美しい訳を参考にして参ります。お疲れ様でした。
goethe-schubert
2008年10月07日 00:31
ほんとうにお疲れ様でした
時代を背景とした、詩人と作曲家のさまざまな思いがこめられた詩ですから、簡単に書くべきではないと苦しんだ甲斐さんの真摯な態度が表れて、感動しました。
辻森雅俊
2008年10月07日 01:19
完訳を心よりお喜びいたします。どこかしらアイオロス琴をも思わせるライアー弾きの音。『水車屋』の<休息>のリュートもそういえば…、と思ったりします。いつもの夢想ですが。私は無限運動(迷宮)からついに一歩踏み出す瞬間がこの曲か、と思ってもいますが、先走って言いつのれば失礼に当たるのでやめます。とにもかくにも甲斐さんの解説を首をびよ~んと長くしてお待ちしていることは事実ですので。しかしどうぞお焦りのございませんように。それにしましても、「不思議なご老人」「あなたといくことになるのか」とは、心にぐさりときます。私が不思議なおっさんだからでしょうかしら?
甲斐貴也
2008年10月07日 12:41
>渡辺美奈子さん
ありがとうございます。そうですね、確かに、八方塞りとなって進退窮した主人公に似てなくもないですね。その後もライアーは鳴り止まず、旅も続いたろうことを思い、わたしも読みの旅を続けようと思います。多くの貴重なご意見や情報の提供本当にありがとうございました。
甲斐貴也
2008年10月07日 12:43
>goethe-schubertさん
拍手ありがとうございます(笑)
言い訳がましい話に好意的なコメント恐縮です。今後じっくり時間をかけて考えて行きたいと思います。
甲斐貴也
2008年10月07日 12:49
>辻森雅俊さん
ありがとうございます。あまりお待たせしすぎて、ろくろ首にならないよう気をつけないといけませんね。
いつか冗談に「辻森音楽師」と申し上げましたが、まさにその通りと思います。1,2節はともかくそれ以後、特に第4節はわたしには肯定的なものと受け止められます。主人公はこの姿に深い共感を覚えたのではないかと。我々もかくありたいですね。
辻森雅俊
2008年10月07日 18:00
goethe-schubertさんのように拍手の絵文字を遅れなかったことが残念です。さて、連想いや、夢想を許していただけるなら、ライアー弾きは盲目ではないかと、絵画からの連想とは別に思うのです。だからどうしたのだと突っ込みを入れないでください。渡辺さんもご指摘のように未解決に終わるところが、この詩の、あるいはこの曲の真骨頂なのでしょうか。つまり、主人公は盲目の連れを見出し、新たな旅に入っていくのだ……、いかがです?この夢想世界。ところで、私の首は今のところまだキリン程度です。とぐろを巻いていますから心配要りません。時折、行灯の油ならぬサラダ油をなめています。
フランツ
2008年10月11日 13:41
甲斐さん、本当に「冬の旅」の長い旅をお疲れ様でした。
1曲1曲を突き詰めて考察された甲斐さんにはただただ脱帽です。
私にとってはこれまで曖昧でおぼろげだったこのミュラーのテキストでしたが、甲斐さんの綿密な調査によって、何度、目からうろこが落ちたことか。
「辻音楽師」の解説を楽しみに待ちながら、このシリーズの完成をお祝いします!
甲斐貴也
2008年10月12日 12:34
>フランツさん
ありがとうございます! 1月からずいぶん時間をかけてきたようですが、実は一曲あたり2週間ほどしか使っていないわけで、特に難しい「ライアー弾き」は到底短期間では無理と考えて、とりあえず訳詩だけ完成としました。各曲で考えたことも、見直さなければいけないところがあると思います。『冬の旅』を読むということも、終わりの無い旅なのでしょうね、きっと。今後もよろしくお願いいたします。
Auty
2008年11月06日 10:37
甲斐さんへ
早いですが拙サポートブログを閉じました。
「冬の旅」おつかれさまでした。
今後のご発展をお祈りします。
がんばってください!
Auty拝
ルリマツリ
2008年12月31日 23:48
甲斐様
「ライアー弾き」の解説をお待ちしています。
私には難しいのですが、読ませていただきたいです。
本編へのupお願いいたします。
甲斐
2009年01月06日 08:23
ルリマツリさん、あけましておめでとうございます。
「ライアー弾き」、難しくて結論が出なかったのですよ。しかし昨年一杯の考察と実演から受けた印象でほぼ固まりました。もう少々お待ちくださいね。
甲斐
2009年02月02日 23:17
ルリマツリさんごめんなさい,やっぱり書けませんでした(>_<)

大筋としては,ミュラーは,啓蒙思想,自由主義思想により社会の底辺の人々との連帯を示唆した(同時代のベートーヴェンの第9の歌詞に通じる思想)。シューベルトは,ライアー弾きに自分自身の将来の不安と孤独感を投影した・・・といったところなんですが,納得の行く形でまとめることが出来ません。もちろんこれまで誰も納得の行く説明をしたことのない作品なので,簡単にできるはずも無いのですが。

時間をかけて取り組んでいきますので,長い目で見守っていただければ幸いです。「大地の歌」の方も調べれば調べるほどいろいろなことがわかり,なかなか先に進みません。今年は新規の記事はかなり減ることになるかと思いますが,その分内容は濃くなると思います。どうぞ気長にお待ちください。

甲斐

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