テーマ:シューベルト『冬の旅』

拙訳添付の『冬の旅』のCDが発売されます。

皆さんご無沙汰しております。 昨年取り組んでおりましたシューベルトの『冬の旅』の対訳を添付したCDが8月20日に発売されます。内容は,ゲルハルト・ヒュッシュ独唱,ウド=ミュラー伴奏による往年の名盤の復刻で,国際的に評価の高い復刻レーベルのオーパス蔵の製作です。同社のCDの対訳はワルターの『大地の歌』に続いて,2回目ですが,この『冬…
トラックバック:0
コメント:8

続きを読むread more

シューベルト:歌曲集『冬の旅』第24曲「ライアー弾き」~ライアー鳴り止まず

24.ライアー弾き むこうの村はずれ ライアー弾きが立ち かじかんだ指で 懸命に回している  氷の上に裸足で ふらふらとよろめき その小さい皿は ずっと空のままだ 誰も聞こうとしない 誰も見ようとしない 老いた男の周りで 犬たちが唸る 彼は何が起きようと 一切をなる…
トラックバック:1
コメント:13

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』第23曲「並んだ太陽たち」~失われた愛と誠実、あるいは信仰の象徴

並んだ太陽たち 三つの太陽が空にあるのを見て 長いことそれに目を凝らしていた 太陽たちもそこに動かずにいた まるで僕から離れたくないように ああ お前たちは僕の太陽じゃない 他の人の顔を見ておくれ! ああ 確かに僕もこの間まで三つ持ってたが 飛び切り良い二つはもう沈んでしまった 三つ目も続いて沈んでくれればいい …
トラックバック:0
コメント:15

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』:第22曲「勇気を出せ」~欝の「幻日」と表裏一体の躁状態、アンティフォナ

22.勇気を出せ 雪が顔に当たるなら 払い落としてやろう 胸の内で心が訴えるなら 明るく陽気に歌ってやろう 聞くな 心の言うことを 少しも耳を貸すんじゃない 気にするな 心の嘆きを 嘆きは愚者のすることだ 朗らかに世の中へ出て行こう 風と嵐に逆らって この世に神がおられぬのなら 僕らが神になってやれ!…
トラックバック:0
コメント:28

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』:第21曲「旅籠(はたご)」~教会墓地は居酒屋なのか?

21.旅籠(はたご) 僕の辿った道は ある墓地に通じていた ここを宿にしたいと 心ひそかに考えた 緑の弔いの輪よ お前達は疲れた旅人を 冷たい旅籠に誘う 目印なのかもしれない この家の部屋は全部 塞がっているのですか 僕は疲れて倒れそうなのです 瀕死の傷を受けているのです おお 慈悲を知らぬ酒亭…
トラックバック:0
コメント:2

続きを読むread more

シューベルト:歌曲集『冬の旅』 第20曲「道標」~『冬の旅』における「旅」と「逸脱」

20.道標 なぜ僕は他の旅人が 歩く道を避け 雪積む岩山を抜ける 隠れた小道を探すのか 人目を恐れることなど 何もしてはいない なんと馬鹿げた欲求か 荒涼の地へと駆られるとは 路傍に標(しるべ)が立ち 街々の方角を指している だが僕は憑かれたように歩く 安らぎ無く 安らぎを求め 眼前…
トラックバック:0
コメント:5

続きを読むread more

渡辺美奈子さんのご投稿:シューベルト歌曲七篇

わたしの『冬の旅』シリーズでは既におなじみの、ドイツリート、ドイツ文学研究者の渡辺美奈子さんから、当HP10周年のお祝いにご投稿を頂きました。いずれもご専門のシューベルトの作品から、ゲーテの詩による五篇、マイアーホーファーのもの一篇、シラーのもの一篇です。渡辺さんはミュラーはもちろん、ゲーテ、シラーなどドイツの古典派、ロマン派の詩人に深…
トラックバック:0
コメント:3

続きを読むread more

シューベルト:『冬の旅』第19曲「幻惑」~自作オペラからの流用

19. 幻惑 光るものが僕の前を親しげに舞う 僕はその後について右往左往する 悦び従いながらもわかっている それが旅人を惑わすものだと ああ 僕のように不幸な者は 目も綾な罠に進んで身を任すもの それは氷と夜と恐怖の向こうに 明るく暖かい家を見せてくれる そしてその中に愛しき魂を・・・ 僕が得られるのは幻惑だけな…
トラックバック:0
コメント:9

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』:第18曲「嵐の朝」~嵐の朝の三色旗?

18.嵐の朝 烈風はかくも引き裂いた 天空の灰色の衣を 千切れ雲が乱れ飛ぶ 戦いに疲れてあちこちに そして紅い焔の輝きが その中へと進んでゆく これぞ僕の想いそのままの 朝であると言おう 僕の心はこの空に視る 自らの絵姿を それは冬そのもの 冷たく荒ぶる冬なのだ 18. Der st&u…
トラックバック:0
コメント:4

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』:第17曲「村で」~「時代は芸術を支配する」(ヴィルヘルム・ミュラー)

シューベルト『冬の旅』:第17曲「村で」~「時代は芸術を支配する」(ヴィルヘルム・ミュラー) 17. Im Dorfe 村で 吠える犬たち、がちゃがちゃ鳴る鎖 各々(おのおの)の寝床で眠る人々 叶わぬものをいくつも夢みて 良かれ悪しかれ元気を取戻す そして朝には全て融けて流れてしまっている いいじゃないか、分相応に…
トラックバック:0
コメント:7

続きを読むread more

『冬の旅』第四曲「氷結」の歌詞変更、「急いで間違えた」は大間違い!?

都合で『冬の旅』訳詩は今週中お休みですが、第4曲「氷結」の解釈で新事実が判明したのでお知らせします。 この曲でのミュラーの原詩の"erfroren"がシューベルトによって"erstorben"に変更されていることについて、拙訳のその曲の項のコメントでいろいろ憶測しました。正直この件はこれまで書いた中でも一番評判が悪く、全曲訳出後に…
トラックバック:0
コメント:8

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』第16曲「最後の希望」~O.ヘンリー『最後の一葉』に直接的影響!?

16.「最後の希望」 そこかしこの樹に見える いくつもの色づいた葉 僕は樹々の前に佇み しばし想いに耽る その一葉を見つめ 願いを懸ける 風が僕の葉に戯れると 僕も震える、あらん限り ああ、葉が大地に落ちたら 共に希望も潰えるのだ 僕も大地に身を投げて 我が希望の墓に涙しよう 16. L…
トラックバック:0
コメント:8

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』第15曲「烏」~誠実の象徴

15. 烏 一羽の烏があの街から 僕のあとについて来た 今日まで絶えることなく 頭の上を舞っていた 烏よ、おかしな奴め 僕を見捨てる気はないのか 多分もうじきここで 僕の体を餌にするつもりだな まあいい、いくら杖にすがっても もうこれ以上進めはしまい 烏よ、最期に僕に見せてくれ 墓まで続く誠実という…
トラックバック:0
コメント:20

続きを読むread more

シューベルト:『冬の旅』第14曲「灰色の頭」~自分の頭の上がどうして見えたか

14. 灰色の頭 霜が白い煌めきを 髪の上に散りばめた もう老人になったかと 僕はとても嬉しかった だがそれはすぐに消え失せ 黒髪に戻ってしまった 僕は自分の若さが恐ろしい・・・ まだ棺桶までなんと遠いことか! 夕映えから黎明の間に 頭が灰色になった人が何人もいるという 誰が信じようか 僕の髪が この…
トラックバック:0
コメント:6

続きを読むread more

シューベルト:『冬の旅』第13曲「郵便馬車」

13. 郵便馬車 通りの方から郵便ラッパが鳴り響く どうしたことだ、何故こんなに高鳴るのか 僕の胸は 郵便馬車はお前に手紙など持って来ない いったい何がそうも奇妙に昂ぶらせるのだ 僕の胸よ そうか、郵便馬車があの町から 愛しいあの娘のいる所から来たからだな 僕の胸よ! ひと目向こうを眺めてみたいのか …
トラックバック:0
コメント:3

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』第12曲「孤独」~永遠の象徴・樅の木

シューベルト:歌曲集『冬の旅』~第12曲「孤独」 12. 孤独 暗澹としたはぐれ雲が 澄んだ空を横切るように 樅の樹の梢を 澱んだ微風が揺らす時に 足取り重く彼方へと 僕は我が道を行く 朗らかにさんざめく中を 孤独に、挨拶も交わさずに ああ、なんと穏やかな風! ああ、なんと明るい世界! 嵐が吹き荒…
トラックバック:0
コメント:4

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』:第11曲「春の夢」~雄鶏を飼っている炭焼きの家、大鴉、愛の回想

11.春の夢 五月に咲き満ちるような とりどりの花の夢を見た 朗らかに小鳥がさえずる 緑の牧場の夢を見た すると雄鶏の鳴き声で 目が覚めた あたりは冷たく陰鬱で 屋根では大鴉(オオガラス)が騒いでいた あの窓硝子に 木の葉を描いたのは誰だ 冬に花を夢見る者を 嗤っているのか? 愛の日々を夢見…
トラックバック:0
コメント:5

続きを読むread more

『冬の旅』第10曲「休息」~恐るべき寒さ・・・小氷期

休息 身を横たえ休んで初めて いかに疲れているか気づいた 荒れ果てた道の旅に 気力を得ていたのだ 脚は休息を求めなかった 立ち止まるには寒すぎたから 肩は荷の重みを感じなかった 強風に歩みを助けられたから 小さな炭焼き小屋に 身を休める場所を見つけた だが四肢は休まらない 傷が燃えるように痛むのだ …
トラックバック:0
コメント:6

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』第9曲「鬼火」

「鬼火」 岩場の谷の奥底へ 鬼火に誘い込まれて行った どうやって出口を探すか? そんなことはどうでもいい 迷うことには慣れてしまった どんな道にも行き着く先があるのさ 人の喜びも苦しみもみな 鬼火のゆらめきでしかないのだ 干上がった渓流の跡を辿り ゆっくりと降りて行こう・・・ どんな流れもやがて海に達す…
トラックバック:0
コメント:6

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』(8)「回想」~「ロメオとジュリエット」の引用?

8.回想 氷雪を踏みしめているのに 足の裏が燃えるようだ あの塔が見えなくなるまで 息をつきたくない 石につまづきながら 街の外へと急ぐ カラスどもが家々の上から 帽子に雪つぶてと氷片を落とす 何と違うもてなし様だったことか 移り気な街よ お前の輝く窓辺では 雲雀と小夜鳴鳥が歌い競っていた 周り…
トラックバック:0
コメント:2

続きを読むread more

シューベルト:『冬の旅』(7)「流れの上で」

7. 流れの上で あんなに陽気にさざめいていた 澄んだ渓流よ こんなに黙りこくって 別れの一言もないとは! 固い殻でしっかりと 自分を覆ったお前は 冷たくなって身動きもせず 砂地に横たわっている 尖った石でお前の 覆いに刻み込もう 愛する人の名前を それに日付と時を 初めて挨拶を交わした日 僕…
トラックバック:0
コメント:4

続きを読むread more

シューベルト:『冬の旅』(6)「溢れる流れ」

6.溢れる流れ 僕の眼から涙がいくつも 雪の中に滴り落ちる 冷たい雪片が貪るように 熱い悲しみを吸い尽くす! やがて緑が芽吹く頃 暖かい風が吹きよせれば 氷の塊は砕け 緩んだ雪も解けてゆく 雪よ、僕の想いを知っているな お前がどこへ行くのか言ってくれ 僕の涙について行けば やがて小川に受けとめられ…
トラックバック:0
コメント:4

続きを読むread more

シューベルト「菩提樹」 訳詞:近藤朔風(1880.2.14生まれ)

シューベルト「菩提樹」  近藤朔風訳 1. 泉にそひて、繁る菩提樹、慕ひ往きては、 美(うま)し夢みつ、幹には彫(ゑ)りぬ、ゆかし言葉、 嬉悲(うれしかなし)に、訪(と)ひしそのかげ。 2. 今日も過ぎりぬ、暗き小夜なか、眞闇に立ちて、 眼(まなこ)とづれば、枝は戦(そよ)ぎて、語るごとし、 来(こ)よいとし…
トラックバック:0
コメント:3

続きを読むread more

シューベルト作曲『雀の子』?~朔風『菩提樹』以前の"Lindenbaum"受容

『冬の旅』(5)「リンデの樹」の項で近藤朔風の名訳「菩提樹」(1909/明治42年)について調べるうち、それ以前の明治23年(1890)に出版された『明治唱歌第五集』所収の「ぼだい樹」に行き当たりました。井上武士編『日本唱歌全集』(音楽之友社)に掲載されたこの曲は、シューマンの合唱曲「流浪の民」の名訳で知られる倉本小三郎氏の訳になってい…
トラックバック:0
コメント:2

続きを読むread more

1814年W.ミュラー少尉の『冬の旅』~語られない「前段」の真相!?

『冬の旅』の訳詩のための参考文献として、『ゲーテ年鑑第48巻』(2006年・社団法人日本ゲーテ協会)所収の「『冬の旅』の根底にあるもの~ヴィルヘルム・ミュラーのベルリン、ブリュッセル時代」(渡辺美奈子著)を読みました。そこでは驚くべきことに、『冬の旅』がミュラーの実体験に基づくものであることが明らかにされています。 ベルリン大学在…
トラックバック:0
コメント:10

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』(5) 「リンデの樹」~「リンデンバウムは菩提樹にあらず?」

5.リンデの樹 市門の先、井泉(せいせん)の傍に 一本のリンデの樹がある その木蔭で幾たびも 甘い夢に耽ったものだ その幹にはいくつもの 愛の言葉を刻みつけた 嬉しい時も悲しい時も そこに行ってしまうのだった 今日、真夜中の旅立ちに その前を通らねばならなかった 暗闇の中だったが しっかりと眼を閉じた…
トラックバック:2
コメント:5

続きを読むread more

シューベルト『冬の旅』第2曲「風見」~風見の腹話術?

シューベルト『冬の旅』第2曲です。今回から特に新しい話もない予定だったのですが、またちょっとしたネタが出来ました。三人称で書かれている第二連を、若者ではなく風見が屋根の上で嘲っている言葉と解釈したのです。ご意見頂ければ幸いです。  シューベルト:歌曲集『冬の旅』~第2曲「風見」
トラックバック:0
コメント:7

続きを読むread more